かつてアラブ商人はスパイスの生産地をひたすら隠し通し、より西側の人たちに売りさばいていた。それも何百年にも渡ってそうしていた。生産地がばれるのは商権を喪失することだ。大航海時代以降、覇権国の移り変わりが激しくなったのも、生産地情報を一か国で独占するのが難しくなった結果という面がある。
ご存知のように、その後、スパイスは世界各地で生産されるようになる。スパイスは特に高価ではなくなった。そして食料保存技術が発達し、スパイスの味と香に慣れすぎた現代人には、スパイスに溺れた時代の人たちの感覚が分からなくなっている。
あえて言えば、嗜好性が高いタバコや酒への「溺れ方」を頼りに、かつてのスパイスの地位を想像するしかない。そう、ある刺激のあるものに対してクセになるのは、どの時代においても人がなかなか抗えない特性である。
が、かといって、「じゃあ、かつてのスパイスは今のタバコと同じか」と一言で言いきったら、大いなる誤解を生むに違いない。
僕たちは分からないことでも分かるようなすべをもち、でも分かりそうで分からないところの線上のギリギリのところでいつも生きている。その一筋縄でいかないところで前進を試みるのが人生だ。
スパイスが教えてくれることも多大だ。
ローカリゼーションマップとは? 異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。
安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih