医療保険の対象となる薬の価格「薬価」は、中央社会保険医療協議会(中医協)の了承を経て決まる。効能が似た薬の価格や海外の価格を参考にし、オプジーボのように日本で初めて販売される画期的新薬の場合は、開発や製造にかかった費用を患者数で割る方式が採られる。しかし、費用は製薬企業にしか分からず、薬価原案を作る薬価算定組織はメンバーも議事内容も非公開で、薬価ルールの透明化が課題になっている。
今回オプジーボが問題となったのは、適応拡大で患者が増えても価格を見直す制度がなかったためだ。
今年8月、乾癬(かんせん)治療薬「トルツ」についても現行の算定ルールが問題となった。海外価格を参考にする現行ルールで1回投与当たり約25万円の薬価を了承したが、中医協は国内の類似薬に比べ高額だったため類似薬を優先するよう条件を付けた。その結果、販売元の日本イーライリリー(神戸市)は申請を一度取り下げ、最終的な薬価は約15万円になった。
製薬業界団体はオプジーボ引き下げについて「現行ルールを大きく逸脱し、日本における新薬の研究開発意欲をそぐ」と反発する。オプジーボの競合薬「キイトルーダ」は今月、悪性黒色腫の治療薬として薬価がつけられる予定だったが、製造元のMSD(東京)は「高額薬をめぐる議論を鑑みた」として、保険適用への希望を見送った。