そういえば、空母の短い滑走路に着艦する艦上機を強制停止する装具まで米海軍は提供した。中国海軍はこの装具の入手に必死で、米海軍にとり門外不出の装備品のはずだった。
とはいえ、米国と日本や豪州のように2国間の軍事同盟に昇華するかというと、そう単純ではない。国際時事問題専門誌ザ・ディプロマットは12年11月、印シンクタンク観察者研究基金のC・ラジャ・モハン研究員による《海洋を巡る米中印の新たな三角外交》と題する論文を載せた。論文は、中印の海軍力増強で《インド洋/太平洋という2大洋はもはや別個の海域ではなく、単一の戦略的海域》と位置付ける。米軍や豪州国防白書も採り上げた概念だ。続いて《インドも中国の経済成長の恩恵にあずかりたいが、中国のアジア支配も望まない。ただ、中国の台頭はインドよりはるかにアジアで先行しており、対米同盟は当然の選択肢》と論ずる。
ところが《米中関係改善の危険など米国の対中政策における一貫性欠如や、アジア回帰政策の財政・政治上の持続性に懸念を抱く。インドが置き去りにされかねないからだ》。同時に《三角外交での中国優位は明白》と警告する。《中国は米印戦略的パートナーシップ深化抑制に向け、状況次第で印米どちらかに秋波を送る選択肢を持っているためだ》。自然《中国を過度に挑発する事態を避けつつ、米国との安全保障協力拡大を狙う》ことになる。