「均衡」に傾くインド
以上2論文の描くベクトルの“色”について、小欄は「伝統的印戦略だった非同盟中立の残滓(ざんし)・多角的外交」と「本音/建前を使い分けるインドの現実主義」の合体をどう捕らえ、評価するかの違いと考える。
例えば以下の諸点。兵器をテコとする米印急接近をよそに、調達計画126機という印空軍の多目的戦闘機候補から米2社がはずれ欧州系2機種が残った▽露兵器導入も太いパイプを維持▽ベトナムとの海軍交流や南シナ海の共同資源開発は中国を刺激したことで抑制気味▽ASEAN=東南アジア諸国連合加盟国との2国間関係は矢継ぎ早に広がってはいるが、ASEANとの包括的関係構築は成っていない-など。
印退役将軍の一人は「インドも米国同様、アジア太平洋での『リバランシング=再均衡化』戦略を推進中だ。インドの求める戦略は、より強大な国と連携する『バンドワゴニング』ではなく『勢力均衡』の方だ」と言い切る。確かに、国境での軍事的優劣や貿易収支を分析すれば、中印関係はインドが圧倒的に不利な非対象。『均衡』に傾く背景には事欠かない。