さて、そこでわが邦(くに)の出番である。インドがこのところ日本との関係に前のめりなのは、印米関係深化ほど中国を刺激しないと思い込んでいるためでもある。日本はこのインドの微妙な舵(かじ)取りを理解した上で、対印外交を進める必要がある。
理解して尚、インドの『再均衡化』の行方は予測しづらい。米国が『再均衡化』で、アジア太平洋にどれほど重心を置くのかも不透明だ。インドのように《米中関係改善の危険》も強く憂うことなく、日米同盟≒バンドワゴニングに過度に頼るわが邦の場合、『均衡』外交は分かるようで難解な外交戦略だ。
難解という点ではわが邦も引けを取らない。「保有すれど行使できぬ集団的自衛権」はその類(たぐ)い。軍事同盟締結国を軍事支援できないのなら、同盟を結ぶ価値がない。インドにとり日本も『均衡』を保つ、有力ではあるがカードの一枚に過ぎない。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)