戦車先進国の3.5世代戦車がほとんど70~80年代のハード・ソフトを改良・発展させた《改修型》なのに対し、10式は新たに開発した技術に彩られている点もまぶしい。
斯(か)くなる技術の起源は、戦前のノウハウと、それを基本に朝鮮戦争中、戦場より後送された米軍戦車の修理・整備を通した学習に遡(さかのぼ)る。以来、国産技術開発の高みを目指し続けてきたが、崇高な国家観をはじめとする強靱(きょうじん)な信念が支えなければ、到達できぬ高度な領域であった。
開発時に付けた暗号名
ところで、機密の宝庫=兵器の開発時、列強は暗号名を付けるケースが多かった。例えば、英国は第一次大戦時、機関銃による連射を跳(は)ね返し、塹壕を乗り越えるべく戦車を開発した。その際、新兵器開発秘匿のため、英国は「水を入れる《タンク》を製造している」と欺(あざむ)いた。こうしてタンクは戦車の英語呼称となっていく。第一次大戦で敗北を喫し、ベルサイユ条約(19年)で戦車などの輸入・製造を禁じられたドイツも第二次大戦までの戦間期、《農業用トラクター》という偽装名称で密(ひそ)かに開発を続けた。