30日、ある大手企業の運用担当者は首をかしげた。先週後半、アルゼンチンの通貨不安に端を発した混乱が新興国に広がり、自国通貨が売られたトルコの中央銀行は28日、利上げを決定。主要政策金利を現行の4.5%から10%へと引き上げた。
通貨リラは下げ止まり、利上げの声明公表から2時間後に開いた東京株式市場も大きく反発した。インドや南アフリカの中銀も主要政策金利を引き上げ、新興国発の不安の連鎖が断ち切られる期待を抱かせた。
だが、FRBのFOMCは29日、資産購入額を100億ドル減らす緩和縮小策を発表。これを受けて新興国通貨は再び売られ、株安も進行した。
米量的緩和の縮小観測が浮上すると、新興国に流れ込んでいた投資資金が流出。新興国の通貨下落や株安を招き、世界に波及する。そんな構図は、FRBのベン・バーナンキ議長(60)が緩和縮小方針を示した昨年(2013年)5月以降、何度も繰り返されてきた。
動揺が再燃する背景にあるのが、ブラジル、インド、インドネシア、トルコ、南アフリカの「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5カ国)」と呼ばれる新興国群だ。経常赤字や外貨準備が少ないといった国内の経済構造から、通貨が売られやすい。