快晴の朝。まだ薄暗いうちに狩小屋を出てウデヘの猟師に借りたスキーをはく。雪の積もったビキン川上流のタイガ。積雪は今の時期でも1メートルほど。アカシカの毛皮を裏につけたスキーさえあれば、雪に埋もれることなく森を歩くことができる。
針葉樹のチョウセンゴヨウやエゾマツ、広葉樹のモンゴリナラやアムールシナノキなど樹種多彩な木立を快適に抜けて尾根にとりつく。夏はジャングルのように鬱蒼(うっそう)とした森が、広葉樹が葉を落とした冬は明るくすがすがしい。
僕は普段も北海道の雪山に入る時はこんな「歩けるスキー」を使う。板の裏に「シール」と呼ばれる逆毛の滑り止めを貼り、かかとが上がる金具で靴を固定するものだ。ウデヘのスキーも原理は一緒だが、板は木製で、つま先とかかとを止めるバンドには革や布など音が出づらい素材が使われている。まさにスキーの原型だ。それが厳しい環境のタイガで、生きた道具として活躍しているのに感動する。
小屋の屋根には時折スキーの形に荒削りした板が挟んである。ウデヘの猟師はそうして森で切り出した板を形を整えながら乾燥させ、新しいスキーを作る準備をしておくのだ。