談した連合の神津里季生(こうづ・りきお)事務局長(左)と経団連の米倉弘昌会長=2014年2月5日、東京都千代田区大手町(栗橋隆悦撮影)【拡大】
企業によっては業績面からも、ベア実施の環境が整いつつある。トヨタ自動車は14年3月期連結決算で、営業利益が6年ぶりに過去最高更新の見通し。日立製作所も23年ぶりの営業最高益を見込む。両社は「業績が良ければ従業員に報酬という意味で還元するのは当然」とベアに前向きだ。
連合がベアにこだわるのは、従業員全体の賃金体系を底上げし賃金上昇を固定化するため。一時金(賞与)のように業績次第で減ることがないからだ。5日、経団連幹部らと向き合った連合の神津里季生事務局長はベアの意義を「あすへの信頼の証し」と表現した。
冬の時代
ただ大手電機メーカー幹部は「好業績だからすんなり満額回答といくかは分からない」と漏らす。牽引(けんいん)役の新興国経済は変調を来し、株安や為替相場の乱高下など動揺が収まらない。14年度以降の先行きに慎重な見方が広がる。
長いデフレと不況の間、企業は「賃金は個別企業の支払い能力に基づき決めるのが原則」との姿勢を崩さず、ベアどころか定期昇給維持が精いっぱいの春闘が続いた。