実験は07年から3年間に及んだ。田中さんら研究陣は、初期虫歯を発症させたエナメル質の断片を人工的に作り、リン酸化オリゴ糖カルシウムによる再石灰化の前後で表面の結晶構造がどう変化するかを丹念に調べ上げた。光の当て方や断片サンプルの微調整といった気の遠くなるような細かい手作業。「何度も施設に泊まり込み、交代で3日3晩、サンプル測定などに追われたこともあった」
その結果、初期虫歯のエナメル質にリン酸化オリゴ糖カルシウムを補うと、失われた結晶が健康な歯と同じ構造に再生することが確認された。研究成果に基づき、従来の再石灰化に加えて“再結晶化”という新しい効果の表示も認められた特定保健用食品として、11年3月に「POs-Ca」が発売された。
研究陣は、もう1つの課題にも並行して取り組んでいた。「より硬くて丈夫な結晶構造にするにはどうすればいいか」というテーマだ。
真っ先に思いついたのは「フッ素」だった。唾液中のミネラルには含まれていない成分だが、これを補えば再石灰化を促すことなどが知られていた。フッ素配合の歯磨き粉は1990年代から急速に普及しているほか、虫歯予防を目的とした歯へのフッ素塗布やフッ素入りの水で口をすすぐ予防法なども実施されている。