もしもこの目の前の風景を、情景を、人びとを、素晴らしい、忘れたくない、傍に置いておきたいと願うのならば、液晶画面をいつまでも睨(にら)んでいるよりも、じっくりと肉体で、五感で体験し記憶する方が、ずうっと思い出となって残るのではないか。五感を研ぎすましたわれわれは、写真の中に収まりきらないさまざまを身体のいたるところで吸収し、目を瞑(つむ)ればその光景がゆっくりと、匂いまでもが浮かび上がってくる。そんな動物的、根源的能力を、われわれは日々恐ろしいスピードで失っているのではないか。この能力こそ、人間が守るべき砦(とりで)ではないか。
推奨、インスタントカメラ
というようなことを欧州旅行中にも考えてしまって、さてそこまで高尚な世捨て人でもない私が困っていると、懐かしきインスタントカメラというものがまだぽつぽつ販売されていることに気づき、早速購入してみる。フラッシュ機能だけでパチリとやるこの簡易カメラに液晶画面なんてものはない。写真のチェックなど当然出来ぬのでパチパチそこそこの結果を求める必要はない。