≪伝統に培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫
昨年(2013年)、無形文化遺産に登録された「和食」。その味わいをよりいっそう引き立ててくれる日本酒の蔵は、全国に1500以上あるといいます。和食も日本酒も四季に恵まれた水の豊かな国土に育まれ、その土地ごとの味わいが地域文化や伝統をつないできたともいえるでしょう。
今回は、静岡県富士宮市に「富士山麓で飲むのに一番旨(うま)い酒」づくりを目指す「富士山に一番近い酒蔵」富士正酒造(資)あさぎり蔵の女将(おかみ)、佐野睦子さん、由佳さん母娘を訪ねました。
日本酒の歴史は、弥生時代、稲作とともに始まったと考えられています。現代のような、冬に仕込む「寒造り」の形になり、保存性を高める火入れを行うようになったのは江戸時代で、1698(元禄11)年には2万7000の酒造場があったと記録されています。天保年間(1830~44年)、西宮の井戸水(宮水)を使った酒が他より良質ということから、水の大切さが知られるようになりました。鉄やマンガンなどには、日本酒の色、香味を劣化させる作用があり、カリウム、リン酸、マグネシウムなどは、麹菌や酵母の増殖を助ける働きがあります。酒造りには鉄分が少なく、有効ミネラルに富んだ水が重要といわれます。また、酒造りに適した「酒造好適米」は、食用米に比べ粒が大きく、質の良い麹をつくることができ、最高品種の山田錦は特に有名です。