≪脱デフレ 安倍政権に「模範解答」≫
「社会的責任」が、2014年春闘で労使双方を突き動かすキーワードだった。連合は3月12日、この日の集中回答日に43労組が回答を引き出し、ベアの平均額は01年以降で最高額となる1950円だったと発表した。大手企業によるベア復活の舞台裏には、企業の国際競争力を維持しながら、安倍晋三政権から課せられた「社会的責任」の“模範解答”を探る苦肉の交渉劇があった。
14年3月期に2兆4000億円の営業利益を見込むトヨタ自動車の労使交渉は、例年以上に重責を担った。ベアでは日産自動車が満額回答を決める一方、15年4月からの増税が決まっている軽自動車のスズキは、鈴木修会長兼社長が「賃上げなんか考える暇もない」との考えを示し、妥結直前まで「ゼロ回答」で調整した。
そうした中、トヨタが示した「ベア2700円」は4000円の要求額を下回り、日産より低く、連合が求めた「1%以上のベア」にも満たない。しかし、この数字には大きな意味がある。