トヨタが満額近くで着地すれば、他業界が追随できないばかりか、2次、3次の下請け企業が置き去りになる恐れがある。一方で、他業界に見劣りする額では「内部留保をため込み、相場を引き下げているとの批判を受けかねない」(業界関係者)。ベア2700円は、定期昇給分7300円を合わせると、21年ぶりに1万円に乗る。「ギリギリの着地点」(宮崎直樹専務役員)だった。
自動車業界の交渉が難航する中、今春闘の相場を引っ張ったのは、業績が回復軌道に乗り始めた電機業界だった。大手6社は現行の要求方式になった1998年以降で最高額の2000円のベアを回答。鉄鋼や造船・重機などベアに慎重だった他業界の背中を押した。
経営再建中のシャープやパイオニアの労組が統一闘争から離脱する中、日立製作所やパナソニックなど6社は統一のベア回答にこぎ着けた。
当初、日立や三菱電機などが高水準のベアに前向きだったのに対し、構造改革中の富士通やNECなどは消極的だった。ある大手の経営幹部は「合わせるにしても1500円が限度」と本音を漏らした。