地球温暖化の影響で、今世紀末の日本の年間の洪水被害額が、最大で20世紀末の3倍以上の約6800億円に達し、砂浜は全国の85%が消失するなど、幅広く悪影響が出ることを予測した報告書を環境省の研究チームが3月17日、発表した。年平均気温は20世紀末に比べて3.5~6.4度上昇するとしている。
「暑さで死亡」2倍
今世紀半ばには暑さが原因で死亡する人が全国的に2倍以上に増え、亜熱帯の果樹が首都圏で栽培できるようになるなど、健康や農業にも影響が出る。会見で研究チームを率いる三村信男・茨城大教授は「影響は温暖化がどの程度進行するかによって左右される。温室効果ガス排出の抑制が必要だ」と強調。一方で「気温上昇を低く抑えられるとしても現在を上回る悪影響が考えられる」とも述べ、被害軽減策の重要性を訴えた。報告書は都道府県ごとに分野別の影響を初めて示した。自治体の政策作りに生かされる。
チームは、4種類のコンピューターモデルによる最新の気候変動予測を活用し、水害や食料などの分野ごとにどのような影響が出るか計算して20世紀末と比較した。この結果、今のペースで温室効果ガスの濃度が上がる最悪ケースでは、今世紀末の年平均気温は、23道府県で5度以上上昇する可能性が高いことが分かった。