小説の始め方というのは、延々とどこに続くか分からないドアをノックし続けてるのに似ている。
今も私はその作業の真っ最中だ。ずらりと廊下に並ぶ膨大な数のドアをもう20日以上、片っ端からノックしている。
もちろん、たった1枚のドアを心の中で見定めていて、「えい」と開けてそのまま中に入ってしまえる作家もいるだろう。前からずっと目印をつけていて、見失わないでいられる作家が、羨ましくて仕方ない。
ドアをノックし続ける日々
するりと書き出してしまいたいところなのだが、目印を忘れたり、普段からアンテナを張り巡らせるのが苦手な私は、まず自分が何についての小説を書きたいのかという心の問いかけから念入りに始めなければいけない。だが、この自分の小説を見つける、という行為の加減がなかなか難しいところで、あまりに考えすぎると、手が止まってしまうし、完璧な出だしなんて求めれば、100年あっても書き出すことができない。