【メジャースカウトの春夏秋冬】恩師であるローイ・カーピンジャー氏(左)と大屋博行氏(アトランタ・ブレーブスの国際スカウト駐日担当)=1月18日、米国(大屋博行さん提供)【拡大】
メジャー初登板で先頭打者に浮いたスプリットを本塁打された場面などは典型だろう。2回目の登板でも序盤に失点し、立ち上がりの不安は課題だ。
ただ、メジャーでは「ボールの上っ面を打者に見せれば勝てる」といわれる。つまり、一発長打の危険性がある高めのボールではなく、低めのひざ元に制球しろ、ということだ。落ちるボールならば、なおのこといい。
田中投手の頭のよさがうかがえるのは、そのことに早くも気づいていることだ。日本時代よりも変化球、とくにスプリットの頻度が増えた。武器となる球種の多投は、クローザーのような配球にも映る。そして、制球に苦しんでいるとはいえ、150キロ前後の直球にも威力があるから見せ球として使え、よりスプリットを振らせることに成功している。
ダルビッシュ有投手(レンジャーズ)の持ち球はどれも一級品だが、田中投手のスプリットほどの「1球で仕留めるウイニングショット」は持ち合わせていない。田中投手のスプリットは、それだけ価値が高い。