読者はお気づきだろうか。いつの間にか自分が“目撃者”に仕立て上げられていることに。読者の心には、見てはならないものを好奇の目で見てしまったような「後ろめたさ」が芽生えていないだろうか。
それだけでは終わらず、読者が見たものは、一歩間違えば自分にいつでも降りかかってくる身近な“事件”でもあることにも気づく。性の誘惑、浮気現場、家庭内での疎外感…。まるで現代の映画や、テレビのサスペンスドラマのワンシーンを見るようだ。
静けさと冷たさ
こうした現代性とは裏腹に、画法はあくまでも古典的だ。19世紀の新古典主義派の画家アングルに影響を受けたというだけに、画面には静けさと冷たさがただよう。