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【タイガ-生命の森へ-】逆さまに映し出す水鏡 (3/4ページ)

2014.6.9 16:55

カラフトグワイはロシア極東やヨーロッパの寒冷地に咲く水生植物。北海道では絶滅危惧種=2012年6月28日、ロシア・クラスヌイ・ヤール村(伊藤健次さん撮影)

カラフトグワイはロシア極東やヨーロッパの寒冷地に咲く水生植物。北海道では絶滅危惧種=2012年6月28日、ロシア・クラスヌイ・ヤール村(伊藤健次さん撮影)【拡大】

  • ビキン川の浅瀬に潜ると降り注ぐ光の中を小魚が群れていた=2012年6月23日、ロシア・クラスヌイ・ヤール村(伊藤健次さん撮影)
  • 森から染み出た湧き水がビキン川を潤す=2012年6月23日、ロシア・クラスヌイ・ヤール村(伊藤健次さん撮影)
  • 川岸に立ち小魚を狙うアオサギ=2013年6月22日、ロシア・クラスヌイ・ヤール村(伊藤健次さん撮影)
  • 川旅の昼食。川の水を汲みたき火を起こす。その間に魚を釣っておかずにする=2012年6月23日、ロシア・クラスヌイ・ヤール村(伊藤健次さん撮影)
  • ロシア・クラスヌイ・ヤール村、ビギン川

 やがて僕の竿(さお)にズシンと異様な重みがかかった。竿が三日月のようにしなり、魚が水中を突っ走る。リールがギーと悲鳴を上げ糸を吐き出す。「タイメーン!」。兄のセリョージャが叫ぶ。水面で身を翻した銀鱗は1メートル近い大物だ。タイメンは北海道にも生息するイトウの仲間だがメートル級の魚はめったに見られない。

 舟を岸に寄せ、僕も舟から降りて魚との引き合いになった。今まで経験したことのない重さ。えたいの知れない水中の怪物でもひっかけ、引きずり込まれるのではないかという恐怖さえわいてきた。

 興奮の中、いったいどれだけ時間が経っただろう。魚も疲れたらしく少しずつ岸に寄り始めた。だが魚をすくう網はない。どうする-。すると弟のワーニャが水に入って魚に近づいていった。あと少しで魚が捕えられる。と思った瞬間、あろうことか太い魚体がガフッと反転した。まだ力は残っていたのだ。プツンと糸は切れ、竿が力なく空を切った。

 大魚は水中に消え、僕だけが呆然(ほうぜん)と岸に残された。セリョージャが両手をいっぱいに広げ、「ボリショーイ(でかかったなー)」と笑い転げた。

水中に生命の揺りかご

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