3月のウスリータイガには冬と春が混在している。風はまだ冬の厳しさが残るが、日差しの明るさに春の気配が漂う。クラスヌィ・ヤール村でのホームステイ先では、暖かい居間の窓辺にジャガイモが並べられ、小さな芽が出始めていた。そのほんのりとした緑色がうれしい。
村人の主食はパンとジャガイモでそこにタイガで捕れたイノシシやシカの肉と川魚、キノコなどが添えられる。肉と魚は玄関脇で冷凍に。ベリー類のジャムやキノコのピクルスは瓶詰にして保存食にしている。
ジャガイモは冬の間、床下の「ムロ」のような場所に入れて凍らせないように保管しておき、春が近づくとその何割かを種芋にする。ウデヘは漁猟(ぎょりょう)が得意な優れた狩猟民族だが、大抵の家には菜園があり、特にジャガイモはよく作られている。中にはタイガで採ってきたギョウジャニンニクを畑に植えたり、チョウセンニンジンを庭の隅に植えている人もいる。
村外れのビキン川に出てみると、川面(かわも)の所々にエクボのようなくぼみがあった。近づけば黒々とした水が流れている。この水はビキン川から大河アムール川に注がれ、やがてオホーツク海へと流れ出る。今の時期、北海道に接岸している大量の流氷の中にも、この源流の滴が含まれているのかもしれない。
手にすくって飲む。ひときわまろやかな味がした。