「もし、崇徳の奥さんが生きていたら、こんな話にはならなかったでしょうね。だって、女の子はみんな母親のところにいっちゃうから。俺のカミさんの実家だってそうですよ。俺はお義父さんと話したいのに、『パパ、そろそろ寝たら』なんて父親が疎外されちゃう」
今までの父親像と違う
自身初の家族小説だが、「家族ものを書こうというつもりは全くなかった。(1974年に放送されたテレビドラマの)『寺内貫太郎一家』も見たことがなかったぐらいだもん。男と女の物語を広げていったら、こうなった。だって、家族も基本は男と女でしょう」
かつてのホームドラマの父親がちゃぶ台をひっくり返すような「剛」なら、崇徳は「柔」。「確かに今までの父親像とは違いますね。崇徳は、たとえるなら交差路で交通整理をする、犬のお巡りさん。40年前は怒って手を出すような父親もほほ笑ましく受け取られたかもしれないけれど、今の時代に合うのは、崇徳のような父親像なのかな」