環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉をめぐり、首都ワシントンの地下鉄駅の床に描かれた日本を批判するキャンペーン広告。「自由貿易は一国よりも重要だ。日本を特別扱いするな」などと刺激的な言葉が並んでいる=2014年7月15日、米国(共同)【拡大】
バラク・オバマ大統領(52)は会合前の6月にAPEC首脳会合が開かれる11月までの協定文書案作成や年内の合意を示唆して交渉進展を促したが、今回の会合では合意時期は議題にならず、米国の思惑通りに事は運ばなかった形だ。
こうした状況はオバマ政権にとって大きな痛手になりかねない。TPPでアジア太平洋地域に高い水準の自由貿易圏を作ることには、米国の経済成長を後押しすることはもちろん、閉鎖的な経済政策をとる中国を牽制(けんせい)するという意味合いもある。TPP交渉の長期化はアジア太平洋地域における米国の影響力の大きさに疑念を抱かせかねず、中国の進出を招く要因にもなる。
オバマ政権はただでさえ、シリア情勢やウクライナ情勢への対応をめぐり、国際問題への対応が不十分だと批判されてきた。このうえアジア重視戦略の柱と位置づけるTPPも暗礁に乗り上げる事態になれば、全世界で米国のプレゼンスを損なったとの評価を受ける可能性もある。