環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉をめぐり、首都ワシントンの地下鉄駅の床に描かれた日本を批判するキャンペーン広告。「自由貿易は一国よりも重要だ。日本を特別扱いするな」などと刺激的な言葉が並んでいる=2014年7月15日、米国(共同)【拡大】
難しい中間選挙前の譲歩
ただし支持率低下にさらされるオバマ政権は11月の中間選挙前に譲歩を示すことは難しいのが現状だ。米国の通商交渉に強い影響力を持つ下院歳入委員会の共和党議員全23人は17日、米通商代表部(USTR)のマイケル・フロマン代表(51)に対し、通商交渉に際して大統領に強い権限を与える「貿易促進権限(TPA)」法の成立前にTPPについていかなる合意もしないよう要望した。
14、15日に米ワシントンで開かれた豚肉や牛肉など農産品への関税をめぐる日米協議では、「霧が晴れて頂上が見えてきた」(大江博(おおえ・ひろし)首席交渉官代理)とされるが、関税率の引き下げ幅といった論点では対立が残ったまま。4月の日米首脳会談後に到達した「8合目」から前に進むことができたわけではない。続いて行われた自動車分野での協議では、米国側が机をたたいて日本に詰め寄る場面もあったという。
日米協議の停滞はTPP交渉全体にブレーキをかける結果になっており、TPP交渉の先行きに関する不透明感は残ったままだ。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)