真っ暗闇の世界に身を置いたことがありますか? そう尋ねると、多くの人は「夜寝るとき」や「光が届かない田舎の夜」を挙げるだろう。
確かに寝るときは明かりを消すが、暗闇に目が慣れてくるといろいろなものが見えてくる。完全な暗闇ではないからだ。田舎の夜も同じ。見上げると星の多さに驚く。降り注ぐ天からの光が、地上の闇を照らしているのだ。
どんなに目をこらしても何も見えない。それが完全なる闇だ。そんな闇の中で歩き、遊び、飲食する。日常生活では考えもつかない体験をさせてくれるのが、東京・外苑前で行われている「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」だ。この世には暗闇の“達人”がいる。視覚障害者たちだ。DIDは視覚障害者がガイドとなり、最大8人がグループを作って暗闇でさまざまな体験をする1時間半のプログラムだ。
先日、姉とともにDIDに初参加した。姉以外は初対面の8人が自己紹介し、愛称を披露する。その意味は暗闇に入ってすぐ分かった。何も見えない世界では音が頼り。「◯◯ですよ」「××さん?」と声を掛けながら、時には手や体に触れながら、8人は離れないように歩いていくのだ。