そんなとき、遠征先で出会ったウクライナの選手たちに、衝撃を受けた。国を代表して試合に出場しているにも関わらず、ボロボロのジャージーや水着を着ていたのだ。母国の経済情勢が悪いため、スポーツに対する支援がない状況だということを初めて知った。
それでもウクライナの選手たちは「夢や目標があれば、どんな状況、環境でも頑張れるんだ」と明るく話してくれた。この言葉を聞いて、さらに衝撃を受けた。
私は日本に生まれ、素晴らしい環境で水泳を続けてきた。水があるのは「当たり前」だったし、練習場に行けば、泳ぐのに適した温度に保たれたきれいな水がプールに張ってあった。現役を引退してからも、充実した環境でスポーツ活動に取り組めている。しかし、国によっては、日本の「当たり前」が通用しない場所が多くある。恵まれた環境のなかでスポーツができる国の方が、少ないのが現状なのだ。今回のW杯を通じ、豊かな生活や恵まれたスポーツ環境が、当たり前ではないことを再認識させられた。