冷蔵室の上段に円盤状の回転棚が設けられ、背の低い主婦層らには手の届きにくい上段奥のスペースを有効活用できるアイデアだった。ユーザーの評判も上々というものだったが、実際の声は違った。よくユーザーの意見を聞いてみると、それほどには利用されていないという実態が明らかになった。この結果は、メーカーとユーザーの考え方にずれがあることを示すものだった。この反省から12年に、「ユーザーとしっかり対話しよう」という共創共感プロジェクトチームが生まれた。マーケティング、デザイン、設計、営業など各部署からなる10人のメンバーで構成、大矢課長もメンバーの一人だ。まず、チームが実行したのが主婦への調査。単なるアンケートでは「本当のこと」は分からない。そこで、10世帯の家庭に絞って、日々どのように冷蔵庫を使っているかという詳細な実態調査を行い、主婦300人からは実際に使っている冷蔵庫の写真を提供してもらった。そのうえで直接面談して「生の声」を聞いた。
その結果、明らかになったのが、主婦のもっとも強い要望は毎日使う頻度の高い中段部分の使い勝手の良さということだった。使う頻度が高いだけに、整理が悪く、食品がごちゃ混ぜ状態になる主婦が多いことも分かった。プロジェクトチームは、この肩より下の高さの中段部分を「ゴールデンゾーン」と名づけて、使いやすさを追求した。