当たり前の日常を
物語を支えるのは名もなき猫たちだ。「エジソン研究所に25セントで買い取られ、実験台になって死んでいった猫がいる一方で、同時期にコンクールで優勝して25ドルの賞金を手にした猫もいて、名前がちゃんと残っている。25セントの命は、書物には名前も何も残されていないけれど、そこには確かにいた。名前が残らなかったから、価値がないとは思えない。今こうして生きている私の日常も、文字としては残らないけれど、すごく大事なものです。残らなかった何かを、あり得たかもしれない形で残したい」
子供の歯が抜けて喜んだり、スグリのゼリーを壺14個分作ったり…。キュリー夫人もまた「日常」を生きていた。「伝記を読むと偉人だけれど、私たちがやることと同じことをしていた。よく考えれば、当たり前なんですけど」