広島市で8月20日未明に発生した大規模土砂災害では、消防士が二次被害に遭い、命を落とした。
広島市安佐北(あさきた)消防署の消防司令補、政岡則義(のりよし)さん(53)は20日午前3時55分ごろ、「土石流が発生し、住民8人が危険な状況にある」との通報を受け、同僚3人と安佐北区可部東(かべひがし)の災害現場へ向かった。
約30分後に現場に到着し、救助した男児(3)を抱きかかえ、ほかの住民7人の避難誘導を開始した。そのとき、再び発生した土石流に巻き込まれ、近くにいた男児の母親(42)と3人で生き埋めになった。午前9時55分ごろに助け出されたが、すでに心肺停止の状態で搬送先の病院で死亡。男児も死亡し、母親も負傷した。
1979年に消防士を拝命した政岡さん。同僚は「レスキュー隊の経験が長く、知識も豊富で中堅として活躍していた。非常にまじめで、現場一筋の熱く正義感の強い人だった」という。
2012年7月には、非番の日に路上で単独事故を起こした車を発見。車内にいた重傷者に止血や呼吸確保などの応急処置を施し、無事救急隊員に引き渡したこともあった。