雨晴(あまはらし)海岸から見た女岩。名前に反して、残念ながら雨に煙っていた。まわりの小さな岩と合わせると、母子のように見えることから「女岩」と呼ばれるようになったという=富山県高岡市(井浦新さん撮影)【拡大】
ものづくりを支える秘訣(ひけつ)を尋ねると、大澤氏からは「魂を込める」、般若氏からは「真面目に取り組む」という言葉が返ってきた。鍛錬を積み、成熟した工芸士の言葉は、簡潔さゆえに深みを増す。
日本には連綿と続く金属器の歴史があり、美の秘密はその起源に宿っている。奇をてらったり我を張るのではなく、ほかならぬ実直な営みがその美を引き寄せるのだと、両氏の言葉は語っているように感じた。(写真・文:俳優・クリエイター、京都国立博物館文化大使 井浦新(いうら・あらた)/SANKEI EXPRESS)
■いうら・あらた 1974年、東京都生まれ。代表作に第65回カンヌ国際映画祭招待作品「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」(若松孝二監督)など。ヤン・ヨンヒ監督の「かぞくのくに」では第55回ブルーリボン賞助演男優賞を受賞。
2012年12月、箱根彫刻の森美術館にて写真展「井浦新 空は暁、黄昏れ展ー太陽と月のはざまでー」を開催するなど多彩な才能を発揮。NHK「日曜美術館」の司会を担当。13年4月からは京都国立博物館文化大使に就任した。一般社団法人匠文化機構を立ち上げるなど、日本の伝統文化を伝える活動を行っている。