世界中で音楽を追い求めているマニアにとって、アフリカほど未知で魅力的な場所はない。米国のソウルミュージックも中南米のラテン音楽も、すべてのルーツはアフリカ大陸。乱暴な言い方をすれば、アフリカ音楽を知れば、世界の音楽を知ったことになるのだ。そして、常に新しい感性のミュージシャンが生まれ、音楽シーンに影響を与えている。とくに、ここ数年はいわゆるシンガー・ソングライターの充実ぶりが顕著。今回はその中から注目の2人を紹介したい。
陰影と緩急、自在に操る
パリ生まれのナイジェリア人であるアシャは、日本でも人気のあるシンガーの一人だ。2007年にデビューし、世界的にブレークした彼女は、非常にバランス感覚のあるアーティスト。ナイジェリア音楽をベースに、幼い頃から聴いていたというソウル、ジャズ、レゲエなどを絶妙にミックスし、スピリチュアルな歌世界を作り上げるのを得意としている。最新作「ベッド・オブ・ストーン」を聴いてみれば、その才能に圧倒されるだろう。欧米のミュージシャンたちとコラボレートしたグルーブ感のあるサウンドはもちろんだが、陰影と緩急を自在に操る表情豊かな歌声は本当に魅力的だ。ロックファンにも訴えかけられるオープンな雰囲気もポイントが高い。