入居者に寄り添うホームホスピス「楪(ゆずりは)」代表の嶋崎淑子さん(左)と、ともに働く北山真樹さん(右)=2014年8月25日(日本財団撮影)【拡大】
普通の民家を利用して、生活の音やにおいに囲まれながら、5人程度で穏やかに暮らす。スタッフは疑似家族として24時間のケアを提供。介護や看護、看取りの経験と知識で本人と家族を支える。運営はほとんどがNPO法人で、ホームホスピス開設のために有志で立ち上げるケースが多い。ただ、経営はギリギリで、スタッフ不足から開設当初は代表自ら夜勤を含むケアのシフトに入るなど、運営側の体力的な負担は軽くはない。
異なる立場や思い調整
嶋崎さんも初めはとにかく「体のつらさ」が募ったという。その状況が大きく変わったわけではないが、4カ月がたち、新しいつらさ、問題も見えてきた。経営面の厳しさはもちろんだが、特に難しいのは人に関わる問題だ。
命の終末期を支える現場では、ケアする側もされる側も表面的な関わり方では済まない。スタッフそれぞれの経験や信念は尊重しつつ、楪としての理念が共有できるよう話し合いを重ねたり、訪問診療や訪問看護で来てくれる医療従事者と介護を担う楪のスタッフの間の異なる立場や思いを調整したり、あるいは入居者と家族の関係がうまくいっていなければ間に立ってサポートしたり、という場面が頻繁にある。どれも簡単なことではない。