入居者に寄り添うホームホスピス「楪(ゆずりは)」代表の嶋崎淑子さん(左)と、ともに働く北山真樹さん(右)=2014年8月25日(日本財団撮影)【拡大】
20年前、ホスピス病棟で母を看取った後、ホスピスの遺族会の世話人として活動を始めた。介護福祉士の資格を取り、国内外の現場を見学し、宮崎市や神戸市のホームホスピスで研修を積み、この春に「楪」を開設した。もともと起業の経験があったわけではなく、初めての事業主として、不動産契約や法人設立手続きなどで、戸惑うことも多かった。応援してくれる地元の在宅ホスピス関係者や仲間の支えで乗り切ったが、オープン後もさまざまな「つらさ」が日々持ち上がる。
それでも、楪に来たくないと思ったことはない。出勤するとまず2階の事務所に上がり、運営面の業務に取りかかる。困難な問題にぶつかると、1階へ。そこには、こぢんまりした明るいリビングでゆったり過ごす入居者がいる。その顔を見ると、不思議と安心する。
研修先のホームホスピスの代表からは、修了時にこう激励された。「これから大変な目に遭うけど、そこにいる人たちから幸せをもらえるから」。つらさについて話すときも、嶋崎さんが笑顔を見せるのは、それを実感しているからだろう。