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【溝への落とし物】腹の立つこと 本谷有希子 (3/4ページ)

2014.9.29 15:40

ずっと見ていたら、だんだん美しい光景に思えてきたので撮影(本谷有希子さん撮影)

ずっと見ていたら、だんだん美しい光景に思えてきたので撮影(本谷有希子さん撮影)【拡大】

  • 劇作家、小説家、演出家、本谷有希子さん(本人提供)

 私も何かを、少しずつずらしてみたい、と思った。そこで私はまず手始めに、妹の名前を全く別人の「ゆり子」にすり替えてしまおうと、日に日に彼女をゆり子であるかのように扱ったが、うまくいかなかった。友達を動く椅子のように信じ込ませようとしたが、やはりうまくいかなかった。中学の時は部長の権限をいかして、「テニス部」を「テニスをしないテニス部」に巧妙に変えていこうとしたが、それもまったくの徒労に終わったのである。

 強引に言いふくめる不快さ

 私に、会話をずらしていく才能がないことは明らかだった。巧みな言葉で人をそそのかすこともできなければ、じっくりと時間をかけるだけの根気や計画性にも欠ける。そもそも「何をどうずらしていくか」というセンスが、決定的になかったのだ。いつしか諦めた。だがおかげで、「ずれているもの」に対しては、妙に目ざとくなった。

劇作家、演出家 本谷有希子略歴

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