ギターで紡ぐ土着と実験性
もうひとり紹介したいのが、ギタリストの笹久保伸。彼はクラシックギターを学んだ後、単身ペルーに乗り込み現地の音楽家との共演によって修業したという異色のプレーヤーだ。帰国後は現代音楽や南米音楽をベースに先鋭的な作品を作り続けている。新作「秩父遙拝」を聴くと、あらためて彼の振り幅に驚かされるだろう。拠点である埼玉県秩父に伝わる仕事歌を掘り起こし、独自の解釈で再現しているのだ。エレクトリックからアコースティックまで駆使したギターと、初めて自ら歌ったというボーカル。それらがまるで機を織るように絡み合い、土着性と実験性が浮き彫りになった奇妙な音楽に仕上げている。もはや民謡の枠を超えたアバンギャルドなサウンドは、プログレッシブロックのファンにも聴いてもらいたい。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)