暑い日差しや激しい雨だけではなく、催涙スプレーや催涙ガスから身を守るために使ったカサが象徴となり、「雨傘革命」と呼ばれる今回の街頭抗議。9月28日未明に始まった街頭占拠は、2017年の次期行政長官選挙をめぐって、中国側が民主派の立候補を阻止する制度改革を8月31日に決めたことが引き金だ。
渦巻く反中感情
デモ参加者は一時10万人を超え、当局の事前承認を得ない抗議活動としては返還後、最大規模になった。ただ、劉さんが例えた「巨人」への嫌悪感は、デモの前から城壁の中の人々に強まっていたことは確かだ。
人口700万人ほどの小さな香港に昨年、中国本土からは実に延べ4000万人以上が押し寄せた。観光収入など経済的効果もあったが、一方で「運び屋」による日用品や食品などの買いあさり、子供の永住権取得を狙った富裕層の妊婦の大量越境、家族連れ観光客などの不作法な振る舞い-など目に余る行為が、英国式教育を受けた香港人に強い「反中感情」を生んでいた。
12年には香港政府が小中高の教科として「国民教育」を義務化しようとして猛反発を受ける問題もあった。
中学生の子供を2人持つ40代の香港人女性、張さんは、「中華人民共和国を愛せという愛国教育、中国共産党を崇拝せよという洗脳教育だった」と憤る。市民や学生が「反洗脳」を訴えて数万人規模のデモを繰り返して撤回させた経緯があるが、親中派の香港政府と中国政府の“結託ぶり”が露(あら)わになった。