日米の実質賃金推移<2008年9月~2014年9月>=※2008年9月=100、※データ:CEIC【拡大】
【国際政治経済学入門】
安倍晋三首相は来年10月に予定している消費税率再引き上げにかなり慎重な考え方のようだが、今年4月の増税による惨状をみると、増税を見送るのが当然だ。にもかかわらず、自民、公明両党内では増税派が多数を占めるし、野党の民主党に至っては、自公を抱きこんでデフレ下の増税を仕組んだくせに「アベノミクスが失敗したから、増税できない」と責任転嫁に努める。これら政治家に共通するのは、国全体の経済を担っている現役世代がいかに消費税増税で痛めつけられているかについての認識の欠如である。彼らは、当面の予算で社会保障増加分の収入を増税によって確保してばらまくことしか考えない。
リーマン後の日米相違
いきなりだが、グラフを見てほしい。物価の変動分を加味した日米の実質賃金の指数を、リーマン・ショックが起きた2008年9月を100として追っている。実質賃金とは、消費者物価指数の増減を加味した、勤労者が実際に消費に使える所得のことである。「リーマン」を起点にしたのは、金融バブル崩壊後の実質賃金は長期下落傾向にあるという見方が有力なためで、事実、1930年代の大恐慌期の米国はそうだった。実際にはどうか。