≪首相の賭け 指導部直結ルート構築≫
安倍晋三首相が拉致被害者の家族らの慎重論を半ば押し切る形で、北朝鮮の特別調査委員会による再調査の進捗状況を把握するための担当者の平壌派遣を決めた。新たな安否情報を得られる見通しがない中、「敵陣」の本丸に乗り込むリスクを取ってでも、調査委トップの徐大河(ソ・デハ)国家安全保衛部副部長と接触することを優先した。首相は、北朝鮮の指導部に直結する交渉ルートの構築を急ぎたい考えで、自らの意向が金正恩第1書記に伝わることを期待している。
報告延期で限界感
政府は今年3月、1年4カ月ぶりに北京で開かれた日朝外務省局長級協議を足掛かりに拉致問題解決に向けた協議を加速させた。5月には再調査実施で日朝が電撃合意し、7月からは再調査が始まった。日本政府はその引き換えに独自制裁の一部解除に踏み切った。
だが、9月中旬に予定されていた北朝鮮側からの再調査の「初回報告」が先送りされ、宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使を窓口とした交渉が行き詰まっていた。外務省幹部は22日、「訪朝して直接日本の考えを伝えないと、次の展望は開けない」と指摘し、宋氏との交渉には限界があることを強調した。