今回の担当者派遣は、再調査をめぐる北朝鮮との認識のズレを修正する狙いもある。日朝は5月に「全ての日本人に関する調査」で合意した。しかし、北朝鮮が時間の経過とともに、拉致被害者の再調査ではなく、日本人配偶者や行方不明者などの他の再調査を優先している疑念が消えないからだ。
首脳会談も視野に
菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は22日の記者会見で「具体的な調査結果が得られる見通しではないという前提で訪朝する」と強調、国内世論の期待が高まり過ぎないよう“予防線”を張ることも忘れなかった。2日間の調査委からの聴取で再調査の実態がどこまで明らかになるかは不透明で、北朝鮮側のペースに乗せられる危険性は否定できない。
2004年に政府の担当者が訪朝した際、北朝鮮は拉致被害者、横田めぐみさんのものとされる遺骨を日本側に提出したが後に偽物であることが判明し、世論の批判が高まった。今回も北朝鮮が不誠実な態度をとれば、国民が「対話」を支持しなくなる懸念がある。
首相には、日朝首脳会談へのきっかけをつかみたいという思惑もあるようだ。拉致問題をライフワークとする首相が、大きな賭けに出たといえる。(山本雄史/SANKEI EXPRESS)