ハンコックさんがかつて「みんながテレパシーで通じ合った魔法のような夜」と評したステージだが、回想録ではこの出来事で「人はチャンスの獲得より安全な方策を選ぶ傾向にあるが、ジャズでは(危機に直面しても)自分を信頼することがアンチテーゼ(ある命題を発展的に否定する命題)につながる」と悟り、人生における重要な教訓になったと明かした。
探求をやめるな
また、回想録に関するAP通信とのインタビューでは、72年から信仰している仏教について「そこから学んだ最も重要なことは、私の人生の中心が音楽家であろうとすることではなく、人間であろうとすることだと分かったことだ」と明言。90年代の麻薬中毒を乗り切れたのも仏教で学んだこの精神と家族の助けがあったからだと訴えた。
「マイルスはわれわれに対し常に新たな挑戦を求め、創造性を刺激した。現状打破のため規則を破る必要性を感じていた」と語るハンコックさんは、彼との活動でこう学んだという。
「もし何かを成し遂げようと決意したら、人生であれ、音楽活動であれ、探求することと学ぶことを決してやめてはいけない」(SANKEI EXPRESS)