重い孤独ゆえ、自分たちだけの世界を作り上げ生きてきた2人。しかし、大人への入り口に立ち、まこは女優、嵯峨は一人前のパン職人へと少しずつ外へと目を向け始める。「変化する瞬間を書くのが小説だと思っています。特に男の子は、社会に出て就職すると大きく変化します。ずっと子供だと思っていたのに、いつのまにか大人になっていた。その変化に、まこは驚き、戸惑う」
心に残る詩を作中に
まこが学園祭で上演する舞台で朗読するのは、メキシコのネーティブアメリカンの小さな部族の詩だ。
《「一羽の鳥が翔んで 翔んで 遠く空の涯てまでも 昼も夜も翔んで 翔んで 太陽と月を訪れる」》
「メキシコのネーティブアメリカンの思想には、昔からひかれていて、今までの作品にもそれは反映されている」というが、実際に詩を作中に引用するのは珍しい試みだ。「ネーティブアメリカンの詩をおさめた『チョンタルの詩 メキシコ・インディオ古謡』という本がすごく心に残っていて。一度絶版になってしまったんです。作中に引用することで、何らかの形でこの詩を残せればと思って」