森でひと仕事した後、焚火を囲んでお茶を飲む-。まったく何気ないひとときなのだが、いつの間にか日本では見なくなった風景ではないだろうか。
≪晩秋の空に煙は消えていった≫
チョウセンゴヨウの松ぼっくりは大人の手にあまるほど大きく、袋いっぱい集めれば25キロほどになる。ウデヘの青年はそれを2つ、つまり約50キロを担いでタイガの急斜面を何度も往復する。相当な力仕事だ。当然おなかも減るし、うまく休憩しながらでなければ仕事は続かない。
子供たちは凍ったまま持ってきたソーセージを枝に刺して焼き、「焦げた」「まだ生だ」といっては笑い転げている。熱いラーメンをすすりながらの休憩がとても楽しそうだ。大人もお茶をいれつつロシアならではの小話で盛り上がる。これが最高の息抜きなのだろう。
焚火(たきび)は不思議だ。ただその脇にたたずみ、炎を眺めているだけで気が休まり、時間がたつのを忘れてしまう。過去の出来事がとりとめもなく脳裏をめぐってゆく。僕は北海道の沢登りで仲間と囲んだ焚火や、シマフクロウの鳴き声を聞きつつ眺めた知床の浜の焚火を何だか昨日のことのように思い起こした。