そして森で成長し、枯れていった木を焚(た)くことが、一層この土地との一体感を醸し出しているような気がした。煙が立ち上る先を見上げると、チョウセンゴヨウやヤチダモの大木までもが火を囲むようにそそり立っている。晩秋の空に溶け込むように煙は消えてゆく。それを眺めながら、僕は焚火の香りを深く吸って、長い息を吐いた。
ハバロフスク在住の著名な画家、ゲンナジー・パブリーシン氏は、沿海地方の自然や少数民族の伝統文化を好んで描き、日本でもデルス・ウザラーの絵本や「鹿よ おれの兄弟よ」(神沢利子作・福音館書店)の挿絵などで知られる。僕の大好きな画家で、彼の絵には河原や森で焚火を囲むひと時代前の人々の姿が随所に描かれている。
今、こうして村人が焚火を囲む姿を見ていると、時代は進んでも、タイガで火をおこし、焚火を囲む時間を大切にする文化は、ビキンの森では何ら変わっていないように思える。「焼けたわよ」。火がいい燠(おき)になった頃だ。ホームステイ先のアンナが焚火の脇に転がしておいたチョウセンゴヨウの松ぼっくりを拾い、実を取り出してくれた。まだ熱い殻をカチッと歯で割り、なかの実をほおばる。香ばしい甘みがじわっと口の中に広がった。