案内してくれた斉藤さんは、「この子たちは1、2歳から手話を使っているネーティブサイナー。表現力が豊かなんです」と目を細める。
たとえば「川」という言葉を手話で表現すると、その川がどちらから流れているのか、どのくらい大きな川なのか、荒い流れなのか穏やかなのかといった、「かわ」という2文字の音声言語では到底表現できない、はるかに多くの情報を伝えることができる。「手話では、聞こえる人にはまねできない高度な表現が可能。この世界では、僕は重度障がい者。手話が使えないかわいそうなおじいさんと思われている」と、斉藤さんは笑う。
この学校で学ぶ子供たちはそんな豊かな手話を使いこなしている。そして、瞬時に「手話ができない人」を見抜き、とても親切丁寧に身ぶり手ぶりで展示品を説明してくれる。思いやりも育っていると感心しきりだ。
ろうにはろうの文化
教室に入ると、子供たちは人懐こい笑顔で迎えてくれる。ペットボトルや紙で作った動物園、世界の言語や文化を紹介する展示、体験できる絵本の世界などなど、教室ごとに展示が工夫されていて、豊かな創造性にうれしくなる。ある教室の窓ガラス一面には「きみはきみだ」の文字。「できることもあれば、できないこともある。でもきみはきみだ」と。明晴学園の理念が飛び込んでくるようだ。