この学校に通う子供たちのできないことのひとつが「聞く」ということ。そのできないことを障がいにしない。なので、難聴とか、聴覚障がいとはいわないで、ろう者、ろう児と呼ぶ。イタリアの人がイタリア語で話すように、ろう者、ろう児は手話で話す。聞こえなくてもかまわない。ろうとして生きるための言葉(手話)を身につければいいんだ。そんなごもっともなことに目からウロコ。
「今までは、聞こえないより聞こえた方がいいという標準モデルがあって、それにあわせなきゃならないという教育が行われてきた。一方、この学校の基本には、ろうでもいいじゃないか、というのがある」
ろう児の豊かな文化を目の当たりにしたばかりなので、斉藤さんの話には説得力がある。にもかかわらず、日本は手話の導入が遅れており、日本に90あるろう学校のうちすべての授業を手話でやっているのは、明晴学園だけ。新潟から片道4時間かけ、親御さんに付き添われて通学する子供もいるという。