台湾統一地方選で大勝し、気勢を上げる野党、民主進歩党の蔡英文主席(前列左から2人目)。2016年の総統選での政権交代の可能性も視野に、中国は“無視”を決め込んできた民進党との関係見直しを模索し始めたようだ=2014年11月29日、台湾・台北市(ロイター)【拡大】
定まらない方針
一方の民進党も、中国との地方レベルでの実務交流には前向きながら、核心部分での対中方針が定まっていない。11月末の統一地方選は馬総統(64)が12年に2期目の当選を果たして以降、初めて行われる選挙で、内外のメディアは馬氏の政策、とりわけ対中政策に対する「信任投票」とみていたが、「唯一、民進党だけが、そうではないと強調していた」(台湾の研究者)。
蔡氏は12年の総統選に臨んだ際、再選を目指す馬総統に対する批判として「一つの中国」を前提とする「92年コンセンサス」を否定してはみたものの、自らは「それに代わる『台湾コンセンサス』が必要だ」と述べただけで具体的な中身を語らなかった。蔡氏は中台関係の安定を求める経済界の支持を得られず落選し、主席も辞任した。民進党内には、その反省から「台湾独立綱領」の「凍結」を求める声があったが、今年再び主席に就任した蔡氏は、7月の党大会で凍結問題も棚上げを決めただけだった。対中政策での論争を避けようとする民進党の姿勢は、国民党が「地方選の敗北は馬政権の両岸(中台)政策とは何の関係もない」(報道官)と強弁する根拠にも利用されている。