≪2人の娘育てるため…死亡届提出、一つの区切り≫
「忘れたわけじゃないけど、考え過ぎないようにしている」。御嶽山(おんたけさん)の噴火で行方不明となった三重県鈴鹿市の介護士、伊藤亮介さん(39)の妻、里絵さん(36)は11月下旬、生命保険などの手続きのため、亮介さんの死亡届を市役所に提出し、12月になって受理された。「考えるとつらい。でも、主人は家族がつらくなることを望んでいないと思う」。これから高校生と中学生の娘2人を育て上げるため、一つの区切りを付けた。
16年目の結婚記念日だった10月25日に鈴鹿市内の斎場で、亮介さんのお別れ会を開いた。集まった約200人を前に、思い出と感謝の言葉を述べたが、語り尽くせない思いがあるからこそ、かえって普段の感じで話すよう心掛けた。
公共料金の名義変更などを終え、自宅で開いていた料理教室を11月上旬から再開した。生徒の希望で最初に作ったのはチキンカレー。亮介さんの大好物だが、噴火から全く作っていなかったことに気付いた。「意識してなかったけれど、避けていたのかも」。心の傷に触れたような気がした。