土田高史さん(左)と辻了(さとる)さん(右)と山椒(さんしょう)を手にする松田美智子さん。「この山椒がなくなったら困る。いつまでも作り続けてくださいね」とエールを送る=2014年2月11日、和歌山県(長谷川みず穂さん撮影)【拡大】
石臼で挽く人もいれば、山椒(さんしょう)を育てる人もいる。和歌山県紀美野町で農園を営む宇城哲志さん(40)。多品目の野菜を育て、かねいちにも山椒を出荷している。自作の農産物をいかそうと開いたジェラテリア「キミノーカ」には、山中の集落にもかかわらず、年間3、4万人が訪れるそうだ。
自作農産物でジェラート
紀美野町出身の宇城さんだが、「和歌山はつまらん」と地元を飛び出した。金融・証券マンとして全国を転々としたが、「どこの町も変わらんなあ」と思うようになった。「今はネットも発達して、どこに住んでも手に入るものは一緒ですしね。だったら、同じ質の生活をしようとしたとき、地元の方がランニングコストが低いなと思うようになった」
2008年に退社し、農業を営んでいた実家へ戻った。「農作物の需要が一番心配だった。これからの時代は自宅で料理することも減っていくでしょう。ジェラテリアを開いたのも、まずはお客さんに畑を見てほしかったから。山椒を見て感動して、野菜に関心を持ってもらいたかった。いったん外に出たことで、畑の美しさだったり、生産するだけの場所ではない価値を客観視することができた」