粗製乱造される“残虐モノ”の筋書が毎度同じとはいえ、視聴者の主力は貧富の格差に不満を持つ層。教育レベルは総じて高くなく、芸術/エンターテインメント性のカケラもなくとも、当局は「あてがっておけば十分」と考える。実際、中国社会への鬱積を笑いとともに発散させるべく、日本軍将兵の“残虐性”をコメディーに仕上げた映像も多い。かくして反日映画に加え、テレビでも氾濫する抗日ドラマが2012年、青年層も反日デモに駆り立てた。田舎芝居も層によっては扇動力が有る。映像が芸術/エンターテインメント性を備えれば、感動と陶酔へと自然に誘われ、政治的に捏造された虚構だと疑わぬ反日層は広がっていく。ルトワック氏の予言はくつがえり《敗北による勝利》を獲得するに至るのだ。
プロパガンダにはプロパガンダで対抗したい。南京攻略を描いた映画・テレビドラマ製作→インターネット拡散は検討に値する。南京で潰走する中国軍人が軍服を脱ぎ捨て、虐殺した市民の服を剥ぎ取る史実を再現する。日本軍と国民党軍が戦っている間、ロクに戦いもせず逃げ回っていた中国共産党軍の逃亡史をたどるのも効果的だ。
長い間の洗脳で膨らんだ勇猛果敢な日本人像と比べ始め、中国人の“戦意”も喪失する?(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)