シリア北部の支配地域で、ミサイルと共にパレードする「イスラム国」の戦闘員。この狂信的過激組織にウイルスが渡れば、恐ろしいバイオテロがあるとみてよい(AP)【拡大】
【野口裕之の軍事情勢】
米軍はエイリアンやUFOを監視対象にしていたので「対ゾンビ作戦」を伝える5月の報道に驚きはしなかった。しかし、11月の中間選挙が近付くにつれ気になりだした。イスラム教スンニ派過激組織イスラム国とエボラ出血熱の台頭。2大脅威拡大を前に後手後手に回ったバラク・オバマ大統領(53)の拙策が、民主党大敗北の一因だと指摘され始めたためだった。
対ゾンビ作戦は、死を覚悟したイスラム国のテロリストが故意にエボラ出血熱に罹患して、発症前に敵対国に侵入する-悪魔の所業に備えた対策では?と、頭の中で結び付いてしまったのだ。エボラウイルスへの完全な特効薬はなく、「生きる屍」であるゾンビは仲間をネズミ算式に増殖し続ける。もっとも完全制圧されたウイルスも怖い。
わずか15年で350万人以上を「殺戮」した歴史を刻む天然痘に、世界保健機関(WHO)は1980年根絶を宣言した。事実上の根絶を受け、わが国では76年種痘=ワクチンの定期予防接種が廃止され免疫力ゼロ世代が激増した。天然痘ウイルスを隠匿する北朝鮮がカネ欲しさに、資金の豊富なイスラム国に取引を呼び掛ければ未曽有の危機を生み出す。2020年に東京オリンピック・パラリンピックを迎えるわが国も、対ゾンビ作戦で備えを固めるときだ。