シリア北部の支配地域で、ミサイルと共にパレードする「イスラム国」の戦闘員。この狂信的過激組織にウイルスが渡れば、恐ろしいバイオテロがあるとみてよい(AP)【拡大】
天然痘ウイルスも恐ろし
「忘れられたウイルス」は確実に存在するということだ。
大勢の人々が天然痘にかかり免疫を獲得した時代の死亡率が40%。免疫保持者が少ない時代の死亡率は40%をはるかに超える。テロリストにしてみれば、天然痘は使い勝手のよい兵器なのだろう。すなわち-
(1)完全な特効薬が未完成のエボラウイルスは拡散前に決死の覚悟が伴うが、天然痘にはワクチンが在る。テロリストが接種すれば発病の危険は低い(2)サリンなど化学兵器の多くは即効性があり、他者が倒れて危険を悟る。一方、天然痘の潜伏期間は7日~17日で、発覚が遅れる。凍結乾燥も可能で、人口密集地でまけば感染者が発症し、ようやく天然痘だと判明しても、ワクチンが届き効果を発揮するまで感染は膨張の一途(3)ヒト~ヒトへの感染の他、寝具や衣服からも移る。実際18世紀の北米大陸で英国軍は、天然痘患者が使用した毛布などをインディアンに贈り民族浄化を謀った(意図的を否定する説アリ)(4)天然痘ウイルスの生命力は高く、乾燥した冬季なら数カ月間生き抜く(5)培養が比較的容易…など。